【あさのうた】try a little tenderness/otis redding と 気持ちのいい朝のはなし

 

 

お盆が過ぎ、夏の熱狂はピークを過ぎた。とはいえまだ8月の半ば、暑さはまだまだ続くと思っていたけど、途端に心地の良い風が吹き込みそいら中に立ち込める熱気をさらっていってしまった。ホウキとチリトリでささっとなでるように。

風が吹くたびにほどよく木々は揺らめき、秋の香りがやってきて、心地よく肌を冷やしてくれる。そうするとぼくはついつい空を見上げて、じんわりと幸せを感じる。燗をつけたお酒の一杯目を飲み下したあとみたいに。

音楽も聞かず、荷物も持たず、ベージュのチノパンに浅いグレーのポロシャツ、ニューバランスの黒のランニングシューズを履いて職場までの十分ほどの道のちを楽しんでいた。

時間があれば途中のベンチで朝ごはんを食べ、コーヒーを飲む。それは貴重で、とても自由な時間だ。もしくはお気に入りの木を写真に撮ったりする。もちろんぼくは写真家なんかじゃない。ただ何度もその写真を撮ることで、何か変化が起きないかを見てみたいだけだ。

途中で大体二人くらいランナーとすれ違い、三台くらいのスポーツ自転車が走り抜ける。みんな専用のウェアを着込み、いかにもそれらしい。何人かのOLと何人かの外国人とすれ違った。みんな一体なにをやってるんだろう。でもいつも通りだ。いつも通り、今日もバランスは保たれたまま進行してるようだ。あの娘は可愛いままだし、あの娘は可愛いと思い続けてるままだ。

まだ蝉は鳴いてるけど、じきにそれも聞こえなくなる。多分それには気がつかないだろう。新しい季節のことで頭はいっぱいになっている。

蝉の個体は基本的に男女比率が一対一で、メスは一回しか交尾が出来ない。反面オスは何度でも交尾ができるので、場合によってはやりまくって生涯を終えることができる。そしてそのもう一面には、子孫を残さずして去っていくことになる種もいるということ。何年も土の中に潜っていて、わずか1か月ほどしか地上に出られないのに、と思うだろうか。よくよく考えてみれば僕らの人生だって大半が土に潜ってるようなものじゃないだろうか。蝉みたいに鳴ける間は鳴き続けたい。

 


Otis Redding "Try A Little Tenderness" Live 1967 (Reelin' In The Years Archives)


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Try A Little Tenderness

Try A Little Tenderness