売り子日記その2

 

前もか書いたように5月からとある球場にて、ビールの売り子販売の営業を管理するバイトを始めた。その時点では何か一つのことを長く続けられる気はしなかったから、なるべく短い期間限定の仕事を探していた。時間が経つにつれて自分の風向きみたいなのが変わったら、さっと移れるようにしたかったから。

その点において、シーズン限定というのはちょうどぴったりだった。今のところ10月には終わる予定だ。それでも始める当初は長すぎる気がしていたし、実際やめたくもなった。けど他に当てもなかったし、何かしてないことにはどうにもならない。ちょうど読んでた本にも「やりかけたことは、とりあえずやりきっちゃうことです」なんて書いてもあったから、続けることにした。

3、4ヶ月も経てば何かしら見つかるだろうという見込みでいたけど、どうもそれはハズレかかっている。

昔から当てもなくふらふらするのが好きだった。なにか明確な目的をもって何かをするより、予想もしない何かを待ち望んでた。例えば意味もなく近所をふらふらと散歩したり。

でもそれがそのまま生きる姿勢になると、けっこう難しい。当てもなくふらふらするのには思ったよりずっと教養が必要みたいだ。

 

今日は売り子さんがせっせと担いでくれるビールの樽の納品の日だった。試合はないので、ただ納品するだけ。だいたい1日2500〜4000杯くらい売れる。ひと樽でだいたい22杯くらいとれるので、100〜200樽くらいが空っぽになる。売れる売り子さんだと1日で300杯近く売るので、ひとりで14樽くらいを空っぽにする。

その減った分を補充するわけだ。発注は見込みでするので、だいたい一回で200樽くらいが納品される。またそれが大体トラック一台で輸送できる量だ。

トラックが球場に到着すると、電話がきて納品専用のシャッターを開け、あとは搬入をしてもらう。作業の間はお客さんが間違って入ったりしないように監視をしている。そんなの入るひとがいるのかと思うけど、これが案外多い。最初のうちはそれなりに穏便に対応するんだけど、だんだん「なんでこんなとこに入ろうと思うんだよ。」と正直少し腹が立ったりもする。とはいえ基本的に見張っているだけで暇なので、搬入の様子をぼーっと見ている。ひとつ12kgもある樽を200個も一人で冷蔵庫まで搬入するハードな仕事だ。筋肉はそれに応じてビッシリとしている。新しい樽を納品し、空になった樽を回収する(これも200樽くらい)それが彼らの仕事だ。

真夏の炎天下での作業。いつも大きく息を切らして、プールに飛び込んだみたいに汗を滴らせ、眉間には皺がより、それでもしっかりと搬入をしてくれる。そんな作業を片隅でぼーっと見てるのは、それだけで何か悪いことをしてるような気分になる。

だからいつも僕は。もうちょっとこの作業が楽にならないのかと考えたりする。ちょっと考えただけでもなんとなく「こうすれば」みたいなのが思い浮かぶけど、1番の問題は彼らが「やりきってしまう」ことが問題な気がしてくる。どれだけ体を痛ませても、不平を漏らさず、任務を遂行してしまうが故に、改善が進まないような気がしてしまう。そう思うと、いったい何が彼らをそうさせるんだろうと考えてしまう。

お給料がいいんだろうかとか、体を鍛えるのが好きなんだろうかとか。

もしもこのハードな仕事が全面的に無くなったとしたら(ロボットの発達とかで)いったいかれらは何をするんだろう。

そんなことよりも、自分のことを考えなさいって、この辺りでいつも自分に突っ込みが入って我に帰るのでした。